2023/06/16 11:43
季節になると数千キロを休みなく移動し、飛び続ける渡り鳥、そして海の中をずっと泳ぎ続ける回遊魚、果てしなく長い距離をひたすら移
動する動物たちがいます。
近年の研究により、その驚異的な行動を可能にする、秘密が解明されました。
それは「鳥の羽のつけ根」や「回遊魚の尾ひれ」など、最も酷使する部分に多く存在している、アミノ酸結合体。
「イミダゾールジペプチド」と言う物質に有る事が解りました。
その中でも「カルノシン」「アンセリン」は驚異的な彼らを支える栄養素として注目を浴びています。
そして最近になって、さらに第3の新しい「イミダゾールジペプチド」が発見されました。
それは、クジラから発見され、「バレニン」と名付けられました。
クジラは地球上の全ての海に生息しています。
数千キロもの長い距離を回遊し、泳ぐことができる水生動物です。
クジラはエサを食べる為に北極や南極の高緯度の冷たい海で、一年の約半分を過ごします。
そして残りの半分は繁殖の為、子供を産むために赤道付近の暖かい海に移動します。
クジラの母親は子供を産むと、ほとんどエサを食べずに子育てをします。
子育てをしながら約半年間を絶食状態のまま、数千キロも眠らずに泳ぎ続けます。
また、クジラは生涯にわたり、繁殖活動を続けることが解っています。
その驚異的な行動の鍵が、クジラの特有成分「バレニン」をはじめ、「アンセリン」「カルノシン」の3種類の「イミダゾールジペプチ
ド」ではないかと考えられています。
クジラの体には、スタミナを高める成分として固有の「バレニン」という物質が、「アンセリン」や「カルノシン」に比べて特に多く含ま
れています。
「バレニン」は、イミダゾールジペプチドの中でも最も抗疲労効果が高いと実証されており、ヒトに対しても疲労感の改善や副交感神経の
活性化が確認されています。
「バレニン」はヒゲクジラの筋肉中に多量に含有される、抗疲労作用のある生体物質です。
「筋肉の疲労回復効果 (乳酸の分解)」、「認知症・もの忘れの予防改善」、「活性酸素 (老化物質)の除去」、「細胞の修復や脂肪燃焼を促
進する」といった優れた効果が報告されています。
クジラ以外にも、ウナギ、鶏、牛、豚などの筋肉にも、ごく僅かに含まれているようです。
しかし、「バレニン」の含有量は鯨肉が圧倒的に多く、100g中に千数百mgも含まれています。
これは、驚くべき数値で「バレニン」を摂取するには、鯨肉が最適な食材と言わざるを得ません。
鯨肉は缶詰やサプリメントとしても注目され販売されています。
「バレニン」は、鯨肉の缶詰などを作る際の煮汁をフリーズドライ製法によりサプリメント化することができます。
「バレニン」「カルノシン」「アンセリン」は、それぞれ含まれる食品を摂取することで自然に摂取できます。
鯨肉を食べることで、簡単に効果的に最も抗疲労効果の高い「バレニン」を摂取できる為、 疲れやすい人や貧血気味の人にも元気を与える
ことができます。
鯨肉は本来、牛肉や豚肉その他の畜産物と比べても、高たんぱくで低カロリーな食材として、栄養価も高く、機能性成分も含まれていて、
ダイエットや筋力アップに効果的と注目されてきました。
タンパク質は、筋肉や骨、皮ふや髪の毛などの体の組織を作る重要な栄養素であり、免疫力を高める抗体やホルモンなどの生理活性物質を
作る原料にもなります。
貧血とのかかわりが深い「鉄分」も、動物性食品の中でも非常に多く含まれ、不飽和脂肪酸である「EPA」や「DHA」、そして「ビタミン
B12」「コラーゲン」などの美容と健康に良い、栄養素も多く含んでいます。
鉄分は、赤血球を作るために必要な栄養素です。
コラーゲンは、皮ふや関節などの弾力性や水分保持力を高めます。
不飽和脂肪酸は、血液サラサラ効果や抗酸化作用があります。
その栄養価に加え、抗疲労効果成分として注目されているアミノ酸の一種、「バレニン」が多く含まれている事で、鯨肉が健康食品として
優れていると言えます。
鯨肉にはさまざまな部位があり、食味や調理法も異なります。
「イミダゾールジペプチド」は、消化吸収された後に再合成されることで、必要な場所で効果を発揮するという優れた特徴があります。
どの料理、調理方法でも摂取可能というわけです。
鯨肉は食品ロスの削減にも貢献しており、鯨肉の加工過程で発生する副産物は全て有効利用されています。
そのため鯨のあらゆる部位はその其々の特徴に合わせ、「刺身」や「ステーキ」、「おでん」など、色々な料理で幅広くおいしく食べるこ
とが出来ます。
例えば、赤肉はカツや刺身に、本皮は塩鯨やコロに、さえずりはおでんに、オノミはステーキにすると美味しくいただけます。
内臓も茹でて食べたり、煮物にしたりします。
食品ロスの軽減に貢献している理由のひとつであります。
その部位によって、美容効果やスポーツに役立つ効果が期待できます。
また、鯨肉は「アレルギー体質」の人への代替たんぱく質として有用といわれており、「アレルギー体質」の人でも安心して食べられるた
んぱく質として注目されています。
「食物アレルギー」を持っている人は、牛肉や豚肉など一般的な動物性たんぱく質を食べられない場合があるからです。
そうした鯨肉の「食の安全性」、「栄養価の高さ」、そして「食文化の継承」は文部科学省の推進する「食育」の方針にも非常に合致する
事から、「鯨肉の食体験」を学校給食の「生きた教材」とした目的で献立に採用する自治体も増え、特に関西の多くの教育委員会で採用さ
れています。
鯨肉が栄養豊富で美味しい食材であるのが一番の理由ですが、子どもたちの成長や健康を サポートする為に、学校給食で鯨肉を取り入れているのです。
ちなみに鯨肉の給食メニューは、竜田揚げやオーロラソース和えなどが昔から定番です。
他にも、カレーやシチュー、ハンバーグなどにも使えます。
学校給食に向いている鯨肉の献立メニューは多様です。
鯨肉の献立メニューを知る事は、日本の食文化や歴史を伝える機会になります。
鯨の竜田揚げ : 鯨肉に下味をつけて片栗粉をまぶし、揚げたもの。
鯨肉の代表的な料理で、給食では50~70年代に定番メニューでした。
酢醤油やソースで食べます。
鯨 汁 : 鯨肉と野菜をだし汁で煮込んだもの。
塩味や味噌味などがある。
鯨肉の旨みが出て、温かくて体に優しい料理。
鯨のごまみそがらめ : 鯨肉をごま油で炒め、みそと砂糖で甘辛く味付けしたもの。
ごま油とみそが鯨肉の臭みを消して、香ばしくて美味しい。
揚げ鯨のマリネ : 鯨肉を揚げてから、酢やレモン汁などでマリネしたもの。
さっぱりとした味わいで、冷めても美味しい。
鯨のオーロラソースがらめ : 鯨肉を揚げてから、オーロラソース(トマトケチャップとマヨネーズを混ぜたもの)で和えたもの。
色鮮やかで子供に大人気な料理です。
鯨のカレー : カレールーに鯨肉を加えたもの。
カレーのスパイスが鯨肉の臭みを消して、コクが出ます。
鯨の甘辛煮 : 鯨肉を砂糖やしょうゆで甘辛く煮たもの。
煮汁がしみ込んで、やわらかくてジューシーな料理。
似たような料理に「鯨じゃが」がある。
どれも栄養価が高く、美味しく食べられます。
鯨肉の給食は、地域や時代によって変化する食の多様性を知る機会にもなります。
日本では古来より沿岸部で捕れた小型のイルカ類から大型のクジラ類まで様々な種類の鯨 類を食用としてきました。
特に江戸時代以降は捕鯨技術の発達と共に全国各地で消費されるようになりました。
戦後の食糧難の時代には、安価で栄養価の高い鯨肉が日本人の食生活を支えました。
また、縄文時代から日本では鯨肉が食べられており、遺跡からも鯨の骨が発見されています。
地域ごとに異なる呼び名や調理法も生まれました。
鯨肉は日本の伝統的な食文化の一部でもあり、多くの人に味わってもらいたいと思います。
歴史や文化を知るうえでも、鯨肉は日本人の食卓に欠かせない存在です。
人の体にもそして、子供達にも欠かせない存在のパワーフードです。
鯨肉は「持続可能な食料資源」であり、「科学的根拠」に基づいて「人と水産資源のバランス」を取って、捕獲されていることはSDGs14番目のゴール「海の豊かさを守ろう」にも貢献しています。
日本では、「食の安心安全」を図るため、捕獲したクジラに全頭検査を実施しています。
また、一定の安全基準をクリアしないものは流通させないとしています。
最近は、鯨肉を食べた事の無い子供達も多く見受けられます、食べ物であることを知らない子供達も少なからずいる様です。
その中で、実際に子供達に鯨肉を食体験してもらう事は、「生まれて初めての食体験」になるなど、「食育」の観点からも貴重な体験であ
ると言えます。
「食育」で大切なことは、子供達が実際に自分が食べた「食べ物」に対して感じたことを、正直に伝え、考えることだと思います。
そうする事で、子供達の関心や興味を生み出し、「生まれて初めて食べる」という経験は、子供達の感情を感性豊かにします。
それは例えば、同じ料理や食材でも、一緒に食べる人によって、「味の感じ方が変わる」事がある等に気付くことが出来、新しい感性の発
見にもつながります。
あるいは、いろいろな人と一緒に食べたりすることで、「新しい味に感じたり」、「違いを感じ、見つけたり」、子供達は食べる事に興味
が持てます。
大切なことは、食べ物に対して好奇心や興味を持ち続けることだと思います。
継続した食体験も、忘れてはいけない非常に大切な事です。
自分が口から摂り入れた物へ、「関心」や「こだわり」を持つ重要性を学んで行かなくては なりません。
それが、「食育」です。
鯨肉はこれからも食べる人を元気にします。